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E46M3 DIYでCSLスタイル カーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと
※2024/7/8更新
エンジンレスポンスが上がってとにかく気持ちがいいです。
フロントからのエンジンサウンドが増大し、気分を高めてくれます。
既に贅沢なNA6連独立スロットルエンジンに、サウンドとレスポンスの贅沢が積み増しされました。
このせいでS54エンジンレスポンス中毒者になってしまいました。
また、ノーマルM3で気になってた低回転ブリッピングの歯切れの悪さが解消して、すっきりしました。
SMG2のCSLプログラムは、カーボンエアボックス前提のブリッピングチューニングがされているのだと強く感じます。
相場は約100万円と聞いていた超高級なこのメニュー。
今回(2023年6月時点では)はコミコミで32万円でした。(今は円高が進んで安くても45万円はしてしまいますが…)
これが実現できたのは、DMEチューンを完全DIYで出来たからです。
今回のコンテンツでは、DMEチューンをDIYする上での必要な知識をまとめまています。
具体的な方法はGitHubにまとまっているのでここでは触れていません。
このコンテンツの価値は、DMEのCSL化情報が密度濃く公開されているNA M3 ForumとGitHubの情報の足りない部分を補足し、より丁寧に解説していることです。
このコンテンツがDIYをやってみようという気を起こせたら幸いです。
目次
※このコンテンツで触れている一般的なチューニングの知識は、専門家のアドバイスを受けた上で掲載しています。
CSLとノーマルM3のエンジンシステムの違い
まずはCSLとノーマルM3のエンジンシステムの違いを把握しておくことが、以後の内容理解に役立つと思いますので、ざっと触れておきたいと思います。
エンジンシステムに限定して違いを挙げると
- エアボックス
- カムプロフィール(イン・アウト)
- バルブ形状
- マフラーの抜け
- スロットル開度(負荷)と回転数に対する燃料噴射制御(VE制御+MAP補正)
です。
ここから分かるのは、CSLとノーマルの違いは吸気排気バランスだけです。
燃料噴射量をチューニングできれば機能するようになるというイメージが湧いただけで、DIYの心理的ハードルがグッと下がります。
とは言っても、ノーマルM3データをベースにチューニングしようとすると、CSLデータとノーマルM3とでは、アイドリングや排ガス保護制御、トルクマネジメントもろもろ、違うパラメータテーブルが多すぎるので、CSLをベースにした方がチューニングが楽というわけです。
ただしデータテーブルの種類はほぼ同じでテーブルの数値が大きく違うだけなので、がんばれば不可能ではないとは思います。(もちろんノーマルM3のパラメータを必要な部分だけCSLに書き換えようともしましたが、諦めました。)
この話を掘り下げると、ここでは書ききれないので別コンテンツにしようと考えています。
CSLスタイル カーボンエアボックスの選択肢
全世界で憧れのカスタムなこともあって、さまざまなメーカーからカーボンエアボックスが発売されています。
(E46M3にCSLが設定されたというのは、オーナーたちに取って特別なことになったのだなとしみじみ感じます。)
この中でも王道と言いますか、人気の高いものはグローバルを見渡して4つだと感じました。
- Turner Motorsport
- Evolve automotive
- Karbonius
- 純正
この4つのうち純正以外の3つはどれを選んでもチューニングのアプローチは同じです。
(それぞれの違いは別コンテンツで触れる予定です。)
吸気口フラップの有無を選ぶ
![]() |
引用:BMW AG サービスガイドより |
純正とそれ以外の大きな違いは、吸気口にフラップ構造があるかないかです。
CSLカーボンサージタンクは吸気取り込み口に可動式フラップが付いていることはご存知ですね。
この可動式フラップの意味は騒音の調整だけでしょうか?よく観察するとこの周辺に装着されている吸気パイプが、吸気量確保に一役も二役も買っているかもしれないという気づきが得られます。
![]() |
引用:BMW AG サービスガイドより |
僕は最も安価なTurner Motorsportのエアボックスを選びましたが、これにはフラップはありません。
交換後に走ってみると、アクセル全開の時の3500rpm以下では詰まったような加速感が顕著でした。アクセルを踏み込み続けても回転数が上がっていかないのでビックリしました。
でも3500rpm以上だと飛ぶように加速します。
僕のようにあまり踏まない(いや、気がつけば開発のせいで踏む人になっている...)人にとって低速域は重要な考慮点です。
これがあって、BMWは吸気量を確保する構造を取り入れたのかなと思いました。
後ほど触れていますが、フラップをつけようとするとやる価値を見出せないくらいとんでもない金額になってしまいます。
なのでチューニングは、この3500rpm以下の低速(低回転)領域をどうチューニングでカバーするかに焦点を当ています。
E46M3のエンジン制御の概要
みなさん、エンジン制御の基本はご存知でしょうか。
チューニングをDIYするには、この基本を理解していないと難しいかもしれません。ここでは、この基本に必要最小限触れておきたいと思います。
クローズドループとオープンループ
クローズドループ
よくネット記事でエンジンチェックランプがついた!O2センサー変えた!とか不具合報告をよく見かけると思います。
車はエキマニに付いているO2センサーで燃焼後の残留酸素濃度を測定することによって燃料噴射量を補正して、理想空燃比14.7になるように制御しています。
O2センサーは車の燃焼制御に欠かせないものですので、異常に関してセンシティブなのかもしれません。
これは一般的にクローズドループと呼ばれています。
普段街乗りしている時は、このクローズドループ制御で理想的な燃焼が行われるよう自動制御されています。
なので空燃比は、基本的にはどんな踏み方をしても車が壊れていない限り14.7になるはずです。(空燃比計で実際に測定してみて確認しています。)
※触媒下流にもO2センサーがついていて、これは排ガス規制対応の為に追加補正用です。これもチェックランプ原因になったりしますね。
オープンループ
一方で(これはあまり知られていないかもしれませんが)スポーツ走行時などアクセル全開で走りたいという時、実は車は理想空燃比を無視して、あらかじめECUにセットされているマップ通りの燃料噴射によって補正無し制御をしています。
これが一般的にオープンループといわれている制御です。
NA車は、トルクが最も出る空燃比は12.5だと言われています。
自動車メーカーは、テスト"現車"に合わせて、テストコースでセッティングしたマップを市販車のオープンループマップに設定して世に出しているようです。
なので個体差だったり、マフラーやエアクリを変えたりしていると、エンジンに供給される空気が変わるのに燃料噴射量は固定なので、オープンループ(全開)で走行すると空燃比は12.5から外れているはずです。
"現車合わせ"というのは、現在の吸排気量に合わせたオープンループマップ(アクセル全開用のマップ)をチューニングすることです。
よってアクセル全開にしない人には、全くの無用なものです。
全開走行する人にとってはやらないと車のポテンシャルを持て余していることになります。 (この話も全部このコンテンツに書ききれませんので、別記事にさせて頂きます。)
チューニングの方向性
E46M3もこの一般的な制御方法に該当しますので、オープンループマップをチューニングします。
一般的に空燃比=トルクと言われており、チューニング業界では加速特性に合わせて空燃比をまずは調整することが基本中の基本となっているようです。
なので実走で加速度の増加特性をデータで取りつつ、その時の空燃比を見て望みの加速度特性になるよう調整していきます。
追記
その後のチューニング研究でアプローチを大幅に見直しました。
DMEチューニングの準備
DMEチューニングをする前の準備として、大きく以下の方針があります。
- ノーマルM3 DMEにプライベーターが改造したCSLデータを書き込む(0円)
- ノーマルM3 DMEをCSL DMEに改造する(設備投資2〜3万円?)
- CSL中古DMEに置き換える(4〜5万円)
- ノーマルM3をベースに超頑張って行う(0円だが時間がかかる)
- LINKなどのフルコン化(20〜30万円)
どの方法を選択するかで費用が大きく変わります。
僕はプライベーターデータを使わせて頂いてます。
CSL DMEにコンバートするか プライベーターデータを使わせて頂くか
CSLにコンバートする場合、こちらのGitHubにまとめられた情報にしたがって改造していきます。網羅的に纏められていますので、ここで僕が改めて書き直すことはありません。
スーパープライベーターであるTerraさん(医師)が作成されたデータを使ってセッティングを行う場合、僕が作成するコンテンツを参考にしてみて下さい。(別途記事にする予定です。)
プライベーターデータ(Terra's Tune)について
Terraさんが改造したデータはフラップなしのCSLチューニングデータです。
本来は不可能なノーマルM3のDMEへCSLデータの書き込みを可能にしたものです。
ざっと解説すると、ノーマルM3(後期)とCSLのコンピュータは、ハードウェアは同じでもプログラムの基盤となっている部分が異なります。
基盤が違うのでノーマルM3(後期)にCSLのデータは書き込めません。パソコンでいうとWindowsとMacの違いに似ているかもしれません。
本来、ノーマルM3 DMEにCSLデータを書き込む為には、一度DMEを外して基盤プログラムチップへアクセスするコネクタを半田付けし、専用ソフトを使って基盤の書き換えから行う必要があります。
Terraさんは、OBD経由でノーマルM3(後期)の基盤にCSLの制御プログラムを書き込めるよう改造したものです。(残念ながら、前期型はメモリ増設も含め大きな改造が必要になります。)
どちらの方法も中古CSL DMEを購入するより安価であることには変わりありません。
なので選択の基準はTerraさんを信用できるかできないかになります。
NA M3 Forumを見ていると、実施状況は半々くらいでしょうか。
ただ、Forumの貢献者達は、Terraさんのデータで全く問題ないとお墨付きを出しています。
要するに好みの問題になります。
お金と時間のかけ方は各個人の選択だと思いますので、より気持ちよく車を楽しめる方法を選ぶのが良いと思います。
僕は躊躇なくTerraさんのデータを使わせて頂いています。
Terraさんのデータをインストールする場合、こちらの手順に従ってください。ただしとてもわかりづらいので、この方法をわかりやすく説明したコンテンツを別で書きたいと思います。
3500rpm以下の症状を確認
セッティングしなくても走ることはできます。
問題があるのは3500rpm以下でアクセルを全開にした時や、全開までしはなくても負荷をかけた時、何かが詰まっているんじゃないかと思うほど加速してくれないことです。(軽自動車に抜かれます)
また以下の動画のようにガクガクなってしまうこともあり、低回転のアクセル全開は、まともに走りません。(このまま踏み続けると失火します。)
これは燃料が濃すぎる事が原因ですので、改善したい場合はチューニングが必要です。
チューニングする
当初このコンテンツを掲載した頃と、僕の研究が進んだ現在とではアプローチが全く違うのですが、一般的なアプローチであるオープンループマップの調整を行う場合の方法を解説します。
オープンループ(WOT=ワイドオープンスロットル)のチューニング
これを理解するには、ここまで説明したことと以下2つのコンテンツの内容を理解する必要があります。
これらのコンテンツをご理解いただけたこと前提でシンプルに説明すると、調整が必要なのはKF_TI_N_RF_VL(WOT=フルスロットルの時の燃料噴射量係数)テーブルだけです。
以下TunerProでこのテーブルを表示した画像になります。
縦軸が計算負荷で、横軸がエンジン回転数です。負荷はスロットル開度や吸気量などによって計算された値です。この負荷はエンジン始動中にコンピュータ内部でセンサーの値をもとに計算されています。
このテーブルだと3次元マップですが、どの負荷でも数値が同じなのでわかりやくするために2次元にしました。それが以下の図です。
この図はまだチューニング途中のデータなので鵜呑みにしないで欲しいのですが、青線がCSL純正の係数で、赤線が調整中の係数です。
CSL純正のままだと、3500rpm以下での空燃比が10.0になってしまいます。PLXの空燃比ゲージは10.0以下を表示できないので、おそらくもっと燃料が多かったと思われます。
これを赤線のように設定すると、12〜13を示すようになりました。
ガクガクも一切収まりました。
しかし、乗り続けていると、パーシャル領域(アクセル中間領域)もガクガクする時があることが確認できました。また、2000〜3000rpmピンポイントでなんか制限かけられているような気持ち悪い詰まり感もあります。これを解消するために調整したことを次のコンテンツにまとめました。
参考:E46M3 CSLスタイルカーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと2オープンループマップのチューニングには空燃比計が必須
オープンループマップのチューニングに空燃比計は必須です。 代表的なメーカーは、
- innovate
- AEM
- PLX
です。
空燃比計のことも話すと長いので別コンテンツにしたいと思いますが、購入するならinnovate の LC-2が良いと思っています。(僕はPLXですがinnovateにすればよかったです。)
見る指標は、エンジン回転数に対する加速度と空燃比です。
これらの指標を統合して可視化し、加速度特性を見ながら好みのカーブを描けるように空燃比を修正していきます。
チューニングには点火タイミングやバルブタイミングの変更などアプローチがありますが、モアパワーを求めなければ"燃調"で十分とのことです。
参考投稿
- E46M3 DIYでCSLスタイルカーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと2
- E46M3 DIYでCSLスタイルカーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと3
- E46M3 DIYでCSLスタイルカーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと4
- E46M3 DIYでCSLスタイルカーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと5
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※前期型にお乗りの方は、後期型DMEをご購入又は改造をして頂く前提です。改造をご希望の場合別途ご相談下さい。
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