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E46M3 DIYでCSLスタイルカーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと5
このコンテンツは、WOTとトルクリミットを、計算によって調整したアプローチについて説明しています。
アクセル中間領域(VEマップ)の燃料調整も、これまでの試行錯誤で全体的に落ち着いてきたので、最後の仕上げにアクセル全開領域(WOTマップ)とトルクリミットマップを調整しました。
落ち着いたというのは、データログで取得したラムダの平均値が、全体的に概ね"1"を示すようになったということです。(1より小さいとリッチで、大きいとリーンです。)
WOTマップは本来、ワイドバンドO2センサーをエキマニに取り付けて、アクセル全開における各RPMでの空燃比が概ね12.5になるように燃料噴射量を調整します。
僕はワイドバンドO2センサーは持っているし、ボスも取り付けているけど、センサーなしでもうまく調整できたら楽だし、面白いなと思ってやってみたらうまくいったよ、という話です。
計算は、純正CSLのVEマップのフルスロットル領域と、WOTマップの係数を求め、新しいVEマップのフルスロットル領域に掛けただけです。
トルクリミットも同様に、係数を求め計算してみました。
ここで問題は、実走ログをもとに計算したVEマップにばらつきが大きくて、計算で出すとそのままばらつきが反映されてしまいます。
WOTマップやトルクリミットマップは、アクセル全開(固定)での出力特性を決めるので、グラフの波形が直にトルク感に直結します。
出来ればリニアな(直線的な)特性にした方が気持ちいいと思うので、まずVEマップを整形しました。
最終的にトルクリミットはVEマップとWOTマップを並べて、その間を取るように手で調整したけど、この方法でうまくいきました。
この詳細をチューニングアプローチの一つのアイデアとして残しておきます。
※このチューニングの為に、独自の計算式を組み込んだスプレッドシートや、独自開発した簡易アプリを使用していますが、誰でも使えるものとは言い難いのでこのコンテンツでは公開していません。(後記:VETable編集ツールはGItHubに公開しました。)今後、使い方の説明を行うつもりはありません。ツールを作って使ってみたい方は、”M”ethodologyサービスをご利用ください。
コンテンツ
VEマップはグラフ編集ツールを作り、手作業で整形
冒頭に少し書いたように、データログで作成したVEマップはバラつきが大きくて綺麗とは言い難いし、おそらく車のトルクもこれに連動してチグハグだろうなと思います。(実際走行中にはあまり感じ取れません。)
感じ取れないから、多少手で整形しても、ほとんど変わらないだろうという仮説のもとグラフを微調整の範囲で弄ります。(いや、結構ドラスティックにいじった部分もある。笑)
CSL純正のVEマップを見ると、美しい... どんなアクセルの踏み方をしても低回転からトルクを生み出せる懐の深さを感じます..
少し注釈を入れると、本来VEマップは3Dでの表現が適切ですが、細かい調整は2Dの方がやりやすいです。
2Dマップもx軸を回転数軸とするか負荷とするか、二種類あります。
2D回転数軸:上に掲載
2D負荷軸:下
調整は、"アクセルの踏み込み"に合わせて、どのように"点"が推移していくか、想像しやすい回転数軸表示で行いました。
続いてどのようにグラフを編集していくか、ですが、
TunerPro:3Dグラフ表示しかできないし、グラフを閉じなきゃテーブルがいじれない..断念...
スプレッドシート:グラフが見にくい..しかも、テーブルの該当箇所にフォーカスしたら、グラフの点にもフォーカスされ、周囲のグラフとの位置関係が一目瞭然になるようにしたい..断念...
既製品ツールを検索:ない..断念...
ということでVEマップ編集アプリを作りました。
ChatGPTと共作し、専用編集ツールを作りました。
最近は、簡易ツールであればサーバーを自分で用意する必要がないJavaScriptとhtmlを使ったwebアプリ開発に注目しているので、この条件で作りました。
みんなね、Pythonとかに走りがちだけど、いちいち数値を変えるたびに実行して処理待ちとか、コンソール立ち上げとか面倒なので、瞬間的に変更が反映されるwebアプリが僕は好みです。(できることは制限されるけど)
このブログに埋め込めるようにしたかったけど、見やすさが制限されるので、デスクトップにhtmlを保存し、クリックすると、いつも使っているブラウザで使用できるwebアプリになりました。
ツール:https://github.com/mushitaro/E46M3CSL_TuningTool
最終的にできたマップです。
グラフを見て、ドライブシーンによるアクセルの踏み込み量やその時のシートから感じる加速感、ラムダの値などを想像しながらグラフを調整しました。
うん、、やはり高回転型に振り切ったサーキット重視って感じですね!(走らないけど笑)
WOTマップは純正MAPの係数を使って算出
ラムダの平均値からVEマップを自動調整してくれるツールは、もともとNA M3 Forumの方がスプレッドシートで作成し、公開してくださったものです。
そのツールでは、ウォームアップVEマップの調整を、純正CSLのVEマップとウォームアップVEマップの係数から、算出しています。
WOTマップも同じ着想で算出しました。
おそらく、自分でチューニングしようとしている方なら、アクセル100%ではWOTマップ(オープンループ)に移行してしまって、VEマップでの100%近辺のラムダがデータが取れないのでは?と思うかもしれません。
ですが、WOT閾値を低回転領域も100%にし、トルクリミットマップをVEマップの100%領域の値以下(おおよそで良い)にすることで、VEマップの100%領域のデータログが取れることがわかりました。
VEマップとWOTマップとでは、エンジン回転数が合っていないので、線形回帰でWOTマップのエンジン回転数に合わせてVEマップの値を計算しました。
この推定したVEマップ値に純正CSLの係数を掛けて、新WOTマップを算出しました。
トルクリミットマップは、VEマップとWOTマップのグラフと重ねて、手で味付け
トルクリミットは、エンジン出力特性の味付け的な意味合いを持つマップです。(前にも説明)言葉の通り、エンジンの最大トルクを制限するマップです。
また、トルクリミットマップの値、VEマップの値、WOTマップの値それぞれは、"実際に走行して感じるトルク感"に直結しています。これは何百回もマップの変更と実走を繰り返して確認したので間違いないです。
空燃比だけでWOTマップを作ると、エアボックスの形状やエキゾーストの形状など様々な要素が絡み合ってか、必ずしもリニアになるとは限りません。実際にマップを見てみるとそうです。(純正の方ね。)
ですので、VEマップやWOTマップと比べて、歪な形になっている部分をトルクリミットマップで制限してなだらかに整えます。
当たり前ですが、トルクリミットをWOTマップの値を超えて設定してもそれ以上のトルクは出ません。
トルクリミットをVEマップの値を超えて設定すると、トルクは最大値が出ますが、より多くの燃料を噴射するWOTマップへの移行頻度が多くなって、燃費が悪化します。
なので、燃費重視にするか、トルク特性重視にするか、バランス型にするかなど、味付けになると思います。
僕は、2000rpmから4000rpmを常用するので、この部分を可能な限りトルクを絞り出し、かつリニアにすることを優先しました。それ以上は本気モードでハイパワーを楽しめる2段階特性にしました。
マップ編集はもはやアート作品を描くみたい
アートは作品を見る人への問いかけですね。
作品が、その人の持つ経験や知識などを刺激し、作品を通じて見た人に新たな気づきや感動、進むべき道、笑いなど、それこそ人それぞれの中に生まれる何かを共創するものです。
エンジンチューニングマップのグラフも、まさにそれだなって、チューニングしながら思いました。
面白い!
このグラフをいじりながら僕はニヤニヤしてたと思います。側から見たら、本当にキモいおっさんですね。グラフみてニヤニヤしてるって変態でしょう。笑
今、"M"ethodologyサービスを受けてしてくださっているオーナーさんの車も、このように、この車だけのVEマップを作っています。
どんな形になるかな。楽しみだ。
NFTにしたらチューニング証明として価値を感じてもらえるかな。
ワクワクしかありません。
次はVANOSの調整を1Dエンジンモデリング技術を使って試行錯誤
いよいよ本丸、ずっと可変動弁の動きによるパフォーマンス影響を評価できる時が来ました。
もはやワクワクしかありません。
ずっとどうやって簡単にチューニングしようか、あの手この手を考えていました。
やっとしっくり来る方法の案(仮説)を見つけました。
それが、エンジンモデルによって出力(様々な種類があるのでここでの"出力"は包括的な意味で表現します。)を推定し、推定値から車のパフォーマンスへの影響を評価し、実車のパラメータを書き換える方法です。
これを、今考えている具体的な方法に言い換えると、
OpenWAM(最終アップデートは2016) という自動車エンジンモデリングツール(フリー)を使い、ピストンの数や排気量、スロットルの位置、エアボックスの大きさ、吸気パイプの長さ、EGR、エキマニの長さ、マフラーの長さなどの物理的要素を設定したエンジンパフォーマンス計算式(エンジンモデル)を設定します。 このエンジンモデルに、 現在のVEとカム角を基準とし、負荷とエンジン回転数とバルブ角の変化に対するVEの変化量を推定させ、負荷とエンジン回転数に対する変化量テーブルを作成します。
さらにバルブオーバーラップの増減によるVE変化量も推定し、変化量テーブルを作成します。
これによって、各エンジン回転数と負荷テーブルにおいて、最もVEが高くなるカム角を見つけ出し、実際に車に書き込みます。
実車での評価は、新しいカム角を書き込む前に、走るコースとおおよその時間、走り方を決めてデータログを取り、ラムダの平均を求めておきます。
次に先ほど変更したカム角マップを車両に書き込み、同じようにデータログを取り、ラムダの平均を求めます。
この2つのラムダ平均のテーブルを比較することで、本当にカム角変更の効果があったかどうかを評価します。
この方法なら、今までVEチューニングで培われたデータの取得方法や、データの観察、数値と実際の車両変化の体感など流用できるので、チューニング全体の流れとして気持ちよく行うことができます。
うまくいくかな。やってみないとわかりません。笑
一見、モデル作成する方が面倒に感じるかもしれません。なぜこの方法を取るかというと、例えば、とあるカム角を変えて吸気量やラムダ平均の変化を実走データから見ていく方法もありますが、これまでの経験から、かなりの走行時間、ガソリン量、書き換え回数が必要になると予想できます。
単純に時間コスト、エンジンやDMEのフラッシュメモリの摩耗、PCの寿命も多く使ってしまいます。
これを避ける為に、モデルで変更箇所とパフォーマンスへの影響度の当たりをつけられると、あらゆるコストを節約できると思います。
なので最もエネルギー効率が高そうな人間の脳を使います。(エネルギー消費の多いChatGPTも使ったからトントンかな。少なくともモノの摩耗などは防げると思います!)